社長ブログ

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建設コンサルタント業における規模の経済とは

 当グループに、7月1日、10月1日に新たに企業が加わりました。これで計5社が加わったことになり、最初の案件であった中央技研コンサルタントは東京本社としてNiX JAPANの一部門としましたので、建設コンサルタント事業としては、富山・東京・茨城・川崎・横浜・神奈川全般に本社を置く5社のグループとなりました。グループ化による規模拡大と、単独での成長での規模拡大では、プロセスが全く異なります。当社の場合も私が代表になってからの7,8年間は単独での成長戦略を実施していました。ただしこの戦略は非常に時間がかかりますし、特にコンペティターが多く、発注者やその業務内容における独占力の強い企業も多い状況で、単独で成長を目指すことは極めて困難であることは誰でもわかります。また当社のような地方中堅企業は、大手ほどの資本力や技術力・技術開発力も持ち合わせていないことから、業界のポジショニングとしても厳しい立ち位置にあります。
 このように、単独で成長が難しい場合、グループ化による規模拡大という戦略をとることになります。この戦略の特徴は、単独での成長よりも短期間であること、またグループ化した企業の事業領域や事業エリアが短期間で加わるということです。一方で、単独での規模拡大に比べて、異なる企業が一緒になる訳ですので、相互の融合において一社の場合よりも不利になるかもしれませんし、一般的にはそうであると思われます。金融業の話ですが、「みずほ」は統合にかなり長い時間を要しました。私は個人的に「みずほ」の株主でありますので、このメガバンクの経営内容はある程度把握してきたつもりであり、統合による相乗効果が発揮できるまでに非常に長い時間を要しましたし、未だに株価も低迷しています。
 このように、M&A手法によるグループ化には様々な課題もありますが、建設コンサルタントのM&Aには以下に述べるようなポイントがあると思っています。まず第一に、建設コンサルタントの仕事が属人的かつ発注者からの仕様設計であることにより、企業間での仕事のやり方の差が他業種に比べて極めて小さいことから、融合しやすい、ということです。言い代えれば、会社は異なっても技術者個人が実施する技術サービスの内容は変わらないし、発注者も企業と同様個人を評価しているということです。第二にそのような状況からグループ間でのリソースの共有が極めてスムーズに進行するということです。先ほどの「みずほ」の例は同じ銀行であってもシステムの仕様が全く異なりました。建設コンサルタントで言うと、発注者から要求される仕様や設計・解析ソフト、CADのデータ、GISエンジンやデータベース形式等の互換性がないというようなことかもしれません。建設コンサルタントは海外の企業でもない限り、皆さんほぼ共通の生産システムとなっています。従ってグループ間での技術リソースの共有をスムーズに進めることができます。第三には、我が国の建設生産システムの維持に資するものであるということです。他の業種のM&Aは縮小市場において統合することで事業規模を保つことも目的の一つとなります。建設コンサルタントにおいては市場の伸びは期待できないものの、技術者の不足感は今後さらに大きなものになると思われます。そのような状況において資本の共有化により技術者の生産を継続させ、さらには環境改善を図ることにより、建設生産システムにおけるリソースの維持を行っているということであります。
 このようなポイントにおいて、当グループの現在までの経過としては、東京本社の前身の企業は東京本社の売上という観点で見れば、数倍になりましたし、その後の2社は、売上・営業利益ともに伸ばすことに成功しました。7月以降グループ入りした企業はこれから結果が出てくると思います。グループのリソースをフルに共有することで、全グループ企業が一丸となって、よりお客様に対して品質の高いサービスを提供できるように努力したいと考えています。
 最後に規模の経済の観点からお話したいと思います。経済学でよくつかわれる図です。事業規模は一般的に大きいほうが単位コスト(平均費用)が下がります。製造業ほどこの傾向が顕著ではありますが、我々のような技術サービス業もこの傾向であることは間違いありません。
規模の経済画像
 ではこの概念図において、建設コンサルタント業のQm(最小生産量)はどのくらいなのでしょうか。少なくとも当グループはまだQmには到達していません。私の主観ですが、建設業で1,000億円、グローバル製造業では1兆円位ではないのでしょうか。大手建設コンサルタントで200億円、地域建設コンサルタントで50億円程度かと。ただし、それらはその企業やグループの経営のやり方で大きく変動するのだと思います。
 NiXはこれからもこのような建設コンサルタントの規模の経済を意識していきます。

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