当グループの主力は建設コンサルティング事業であり、技術サービス業に分類されています。技術サービス業は、小さい資本から始められ、大きなアセットを保有しなくて良いことが利点の一つです。一方で、サービス受注型であるゆえの売上の不安定さや従業員一人当りの売上の低さにより事業規模が小さく、他産業に比べて資金が潤沢でないことが、ネガティブな面としてあることは事実です。そのような不利な面を補うために当グループでは発電事業や飲食事業の設備産業的なアセット保有型事業を展開し、ある意味ハイブリット的な建設コンサルタントの姿を目指している訳であります。
このように、サービス業とアセット保有型事業を展開している訳ですが、公共発注者の仕様に依存する建設コンサルティングサービスと、発電事業や飲食事業のようなアセット保有型事業はその性質が異なります。世の中で言われる事業を企画して、可能性調査を経て事業を具体化し、調達・施工(製造)、運営管理(製造及び流通管理)といった一般的な事業は発電事業と飲食事業がそれに該当すると考えます(建設コンサルティングは極めて特殊事業なのです、なので新規参入が少ないとも言えますが….)。
では事業の成功の是非に影響するのはどのようなことなのでしょうか。そのコンセプトや対象顧客、マーケットの将来見込みや同業に対する競争優位等、様々な要素がありますが、ここでは水力発電をケーススタディとします。下図に水力発電事業の実施フェーズを示してあります。企画調査から運営管理までありますが、最も重要な段階は、計画から具体化に移行する段階の「事業採算性評価」になります。この段階までに様々な調査や評価を行い費用が掛かっていますが、それを損切りするのか、または事業性が見込めると判断し、詳細計画フェーズに進むかという判断です。この段階まで要した費用はそれほど大きなものではありませんが、詳細計画段階やましてや調達段階に至ると、多額の費用が掛かりますので、その時点での事業継続中止は大きな損害になります。この事業採算性評価に事業の成功のかなりの割合の要素が詰まっていると言っても過言ではありません。そしてこの採算性評価は、「社運をかけて勇気をもって事業を実施した!」みたいな「黒部の太陽」のフレーズは昔の話で(少し飛躍しましたが….)、厳密に計算された事業実施判断指標によって決定されます。内部収益率(IRR: Internal Rate of Return)や投資回収期間(Pay Back Period)がそれに該当しますし、他にも様々な指標が判断基準として用いられます。と、いうことで、実際はかなり厳密に事業実施が決定されているということであり、決して個人の「希望」や「やる気」、「予想」などで決定されてはいません(当たり前ですが….)。で、ありますので、当グループでは企画から調査、事業採算性評価までのフェーズにかなり力を入れますし、建設コンサルタント故にこのフェーズの作業は得意分野と言えるのです。当グループは現在国内外に発電所を所有また計画中ですが、実はこの事業採算性評価フェーズで継続中止になった案件は、継続した案件の数倍あるのです。
継続中止した案件には開発費用が発生していますので、それは先述した「損切り」であり、損切りの積み重ねの上に、実施できる事業が生まれているということでしょうか。以前は一部投資家の方々からこの開発段階は当グループに負担してもらい、事業継続できることになった段階で資金を出します、といったスキームがありました。冷静に考えると、それは開発段階のリスクは全て当グループが負うことになり、フェアではありませんのでお断りしました。事業を共同で進めるのはリスク分担がフェアでなければなりません。
NiXグループは、今後もこのようなアセット保有型事業の開発を通じて、事業採算性評価の精度向上に努めたいと考えます。
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