企業にとって研究開発は重要ですが、これは企業規模や資金力に大きく左右されます。大企業は売上や利益の一定程度を研究開発費に投じることを決めている会社もあれば、研究所を所有し、売上利益に関わらず常に一定程度研究費を確保している企業もあります。特にグローバルに展開し、世界の流れの先端にいる企業にとっては研究開発はその存在を維持し続けるための最も重要な企業活動であるかもしれません。
一方で当社のような事業規模の企業はそのような研究開発についてどのような課題があるのでしょうか。まずはその事業規模が大企業ほど大きくないために、研究開発費の捻出が負担になることでしょうか。企業の研究開発はすべてが後に収益に繋がるものではなく、一部しか事業化されないといったことが多くあります。その一部の事業化のためには数多くの研究を実施いした方が、ある意味効率がよくなりますが、先行投資費用が嵩むことが課題となります。次に企業経営としてのマインドでしょうか。ある程度安定的に収益を得ている企業は、あえて投資事業への取組といったリスクを背負う必要性を感じにくくなってしまいます。特にコンサルタント企業は請負業であり、自ら市場をつくれない存在ですので、保守的な経営へ一層傾きやすくなる傾向にあります。
このような状況にあって弊社は幾つかの研究開発と投資事業を行っています。本業収益からこの投資費用を捻出することは、簡単ではありませんが、お蔭様でうまく他の部分で収益に繋がっていたり、企業価値の高まりといった部分で回収できているとも考えられ、現状ではうまく行っている方だと思っています。
その研究開発事業の一つが「都市域における局所的豪雨に対する雨水管理技術実証研究」です。これは27年度のB-DASHプロジェクトに採択され、一定程度の研究予算が確保できましたので、研究開発事業の中では成功例の一つと言えるかもしれません。
B-DASH事業とは、「Breakthrought by Dynamic Approach in Sewage High Technology Project」というもので、下水道革新的技術実証研究と言われています。富山市の中心市街地周辺に3基の都市域降雨観測用レーダーを設置し、ゲリラ豪雨の予測と浸水予測を行い、住民に情報配信するといった研究です。
この研究は、実は5年ほど前から始まりました。当時弊社は雨水事業において、浸水対策事業として雨水排水路をモデル化したシミュレーション技術を確立していました。この技術で雨水計画の国の認可もいち早く取得できるようになっており、弊社としても一つの看板技術になりつつありました。この技術をなんとかもう少し活用できないものかと考えていたところ、大学の同窓会で現在の神戸大学教授の大石先生とお会いし、先生がXバンドレーダーの研究を実施されていたこともあり、ご相談したところ、今回の研究の基礎が始まったということです。まさかその時は、この研究が数年後、世の中に実装されるレベルになるとは思ってもみませんでした。
研究当初は、国交省が整備されたXバンドレーダーのデータを使用していたのですが、そこに今回採用した都市域レーダーと降雨予測技術、そしてタブレットによる配信技術を組み合わせて、今回のシステムの構想が出来上がったということです。そして、そのシステムの実証を今回の国総研様のB-DASH事業に採択されたということになります。詳しい内容は割愛しますが、比較的安価で都市型豪雨に対する減災に寄与できるものとして、今後主要都市での導入が期待されるシステムになったと考えています。現在システムの構築は終了し、稼働による実験が継続中です。良いデータが取得できるよう、期待しています。
このように、弊社の研究開発事業は大企業ほど多くはありませんが、実装に近い状態で実験されているという意味では、評価されるものでは無いかと考えています。先日富山市様がお招きしたクライストチャーチ市の建設監督官の方等、海外の方々にも何度かご紹介していますが、非常に興味を示されますので、予算さえ合えば、今後海外展開も可能になるのではないかと考えています。
このように、規模は大きくないものの、今後とも企業価値の創造、そして経営の持続可能性を高めるためにも研究開発、投資事業のチャンスがあれば、積極的に取り組んでいこうと考えています。
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