富山カーボンニュートラルシンポジウムにパネラーとして登壇してきました。富山県ではカーボンニュートラル戦略を策定中です。ご存じのように、政府は2050年に実質的なカーボンニュートラルを目指すと宣言しています。その流れで、都道府県もそれぞれの立場で温室効果ガスの排出削減を目指すということでしょうが、ほとんどの都道府県が2050年にゼロカーボンシティを目指すと表明しています。勿論富山県も、県単独でカーボンニュートラルを目指すという目標が掲げられています。
今回のシンポジウムでの私の役割は、「富山の豊かな水で脱炭素社会へ」というテーマで、15分間の企業としての先進取り組み事例の紹介と、パネルディスカッションのパネラーということでした。弊社の小水力発電開発が先進事例とはなかなか言い難いので、富山県小水力利用推進協議会の会長としての立場も活用し、県全体での小水力の現状と取り組みについてお話させていただきました。その内容の一部をご紹介します。
以前にも全国小水力富山大会でお話させていただきましたが、資源エネルギー庁によると、2030年までにおける再エネ導入量の中心は太陽光と風力であり、開発地点が既に限られる水力は、2030年までの増加出力の1%程度になります。すなわち、水力の開発余力はさほど大きくないということです。一方で、水力が増加電力量に占める割合は10%となり、水力の利点である効率、すなわち設備利用率が高いことがわかります。昼夜を問わず安定的に発電できることが水力、小水力の利点であり、系統を不安定にさせにくい利点があります。そこで、小水力はカーボンニュートラルという社会価値と、安定性・効率性という経済価値を両立できる付加価値の高い電源であると申し上げさせていただきました。
現在の日本の発電システムは大規模集中発電であり、発電時の排熱ロスや長距離の送電ロスにより、6割以上のエネルギーが失われています。水力はエネルギー効率が8割もある上に、富山県の場合は至る所で小水力発電施設が存在しますので、自立分散型電源に適していることや、それを電源にしたミニグリッドを形成することで送電ロスも減らせるといった利点があります。さらには、先ほど申し上げたように、安定的に発電しますので、太陽光や風力を電源としたグリッドよりも、エネルギーマネジメントが比較的容易になり、大規模発電所とのグリッドと繋げば、さらに安定的に運用することができると思います。
すなわち、既設発電所やポテンシャル地域が県土全体に分散している富山の小水力は、自立分散型電源+マイクログリッドに非常に適した地域であり、「富山を小水力+マイクログリッド化」として「富山型カーボンニュートラル」と説明をさせていただきました。現実には系統コントロールやコストに技術的課題はあると思いますが、小さな電源が薄く広く点在する富山の小水力電源の特徴を活かすには、理論的、いや理念的といった方がよいかもしれませんが、間違っていないと個人的には思います。
と、いうことで、弊社の富山県の湯谷川小水力発電所は電力量にして一般家庭1,200軒分ですので、電力使用ピーク時の対応等色々とありますが、ザクっと800kwの小水力は1,000軒程度のミニグリッドを形成できるポテンシャルがあることになります。金沢湯涌は280軒分になります。欧米にはこのようなミニグリッドは既に存在していますので、2050年カーボンニュートラルに向けて、再び小水力が脚光を浴びることを個人的には願います。
もう一つ、弊社の海外事業も実は日本のカーボンニュートラルに役に立ちます。4月には完成する予定のスマトラ島トンガル発電所6200kWですが、環境省の二国間クレジット制度(JCM)に採択されています。本制度は途上国において日本企業の技術で実現した温室効果ガス排出削減の日本への貢献を定量的に評価するものであり、当該発電所では約18,000tCO2/年が日本のカーボンニュートラルに活用されることになります。
弊社にとっては非常にありがたい制度であり、今後のインドネシアの水力開発のモチベーションにもなります。
NiXグループは国内外の再生可能エネルギー開発を通じて、微力ではありますが、定量的に貢献度を認識しつつ、2050年の我が国のカーボンニュートラルに貢献したいと考えます。
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