NiXグループは日本・インドネシアでエネルギー事業の開発を強化することで、両国の脱炭素社会の実現に向け貢献し、サスティナブルな社会に必要とされる企業になるよう取組んでいます
ABOUT TONGAR HYDRO POWER PLANT
トンガル水力発電所は、スマトラ島の西スマトラ州西パサマン県パダン市から約200kmの地点、トンガル川流域に位置しており、発電した電力を今後25年間、インドネシア国営電力会社PT. PLNへ売電します。年間売電量は38.73GWhで、インドネシアの⼀般家庭約46,000軒分になります。
2019年11月にNiXグループが事業主体であるプロジェクトSPC(特別目的会社)のPT. Optima Tirta Energy社(以下、OTE)の株式を75%取得し、マジョリティ株主として事業を進め、日本企業がマジョリティの立場で自社水力発電所を開発した大変珍しいケースでもあります。また、本事業はインドネシア国営開発銀行のPT. Sarana Multi Infrastruktur(Persero)とプロジェクトファイナンス契約を調印し、日本政策投資銀行を始めとした日本の政府系金融機関、地方銀行からも支援をいただき、約3年半の工期を経て、2023年11月に商業運転を開始しました。稼働後も、想定発電量を上回る発電量で発電しており、海外事業ではあるものの順調に安定稼働を続けています。
現在、OTEではトンガル⽔⼒発電所の運営・管理を行う発電所常駐社員として現地⼈材を雇用しており、約25名体制で発電所の運営・管理を⾏っています。
トンガル水力発電所 諸元
事業場所 | インドネシア西スマトラ州西パサマン県 |
---|---|
事業主体 | SPC(PT. Optima Tirta Energy) |
発電出力 | 6,200kW |
年間売電量 | 38.73GWh(インドネシア一般家庭46,000軒分) |
運転開始日 | 2023年11月1日 |
売電期間 | 25年間(FIT:固定買取契約) |
オフテイカー | PT. PLN(インドネシア国営電力会社) |
技術コンサルタント | NiX JAPAN株式会社、PT. NiX Indonesia Consulting |
---|---|
最大使用流量 | 16.0m3/s |
有効落差 | 44.4m |
水圧鉄管 | Φ2.800mm × 1 |
発電所全長 | 3.5km |
導水路全長 | 3.2km |
水車形式 | 横軸フランシス型水車 × 2基 |
01
Weir/Intake(取水堰・取水口)
取水堰と取水口は、計画発電出力を発電するのに十分な水量を取水するよう計画されています。
取水堰の長さは49m、高さは川床から4m、堆積した土砂や石を排出するために幅2mの土砂吐きが2カ所もうけられています。
取水口は幅1.5m、高さ6.5mの4つのゲートがあり、機械的に操作することができます。取水口から水を取り込み、長さ56.8mの水路を通って沈砂池に流れます。
02
Sandtrap(沈砂池)
沈砂池は取水した水から石や岩を取り除くために計画されています。沈砂池の長さは60m、高さは4.5m、幅は14mで、2つのセクションに分かれています。
水路の幅を広げることで水の流速が遅くなり、石や岩が沈砂池の底に堆積します。これらの堆積物は、沈砂池の端にある排水路によって河川に流されます。
03
Waterway(導水路)
導水路は沈砂池とヘッドタンクを繋いでおり、発電に必要な水量をヘッドタンクに送ることができます。水路の長さは全長3,275m、幅は9.12m、高さは2.56mとなります。
04
Head Pond(ヘッドタンク)
ヘッドタンクは水圧鉄管の直前に設置されます。ヘッドタンクから安定した設計流量を水圧鉄管に供給することで安定した発電出力が得られます。長さは40m、幅は12m、高さは8.43mとなります。
05
Penstock(水圧鉄管)
水圧鉄管は発電に十分な水量を発電所に送る鉄管であり、内水圧に十分耐えられる構造となっています。水圧鉄管は地表に設置され、アンカーブロックで固定されています。水圧鉄管の長さは99.28mで、内径は2,800㎜となります。
06
Powerhouse(発電所)
発電所はトンガル川の右岸にあり、コンクリート構造となります。発電所建屋全体の長さは32m、幅17mで、2つの横軸フランシス水車、発電機、コントロールルーム等を収容し、発電所の運営・管理を行っています。
PROJECT HISTORY
日本国内で培った小水力発電事業の経験を海外で活かすべく、自社事業としてインドネシアで水力発電事業の開発を推進することとしました。
インドネシアは現地の自然環境、気候、社会経済情勢、工事環境、資金調達環境等の水力発電事業を実施する上で適した条件をクリアしています。まず、PPA(Power Purchase Agreement)と呼ばれる電力購入契約制度が機能していること、水力発電開発事業の資金調達が現地でできること、水力発電工事を任せられる建設会社が複数あること、雨が多く山が多いという水力発電に適した地形であること、さらに経済成長中の東南アジアは常に電力不足であるため、水力発電事業の開発に絶好の場所であると判断し、インドネシアで事業を実施する決定をいたしました。
自社水力発電所の開発促進に向け、インドネシア人エンジニアを複数名ヘッドハンティングし、2019年4月に現地法人PT. NiX Indonesia Consulting(NIC)を設立しました。現地調査や交渉を重ね、2019年11月に本事業に出資し、2020年3月に建設工事を開始しました。約3年半の工事期間中には、新型コロナウィルスの世界的な流行や大規模な地震の発生、豪雨被害、また用地取得や工事期間における度重なる妨害など様々なリスクや課題が発生しましたが、一つ一つを工事関係者、NICメンバーと協力しながら解決していき、2023年11月に商業運転を開始しました。
2019.11
トンガル水力発電事業に出資
事業主体であるOTE社の株式を実質75%(議決権ベース)取得
2020.03
建設工事着工(準備工)
工事用道路の整地から開始し、建設工事スタッフの寄宿舎等も準備
2020.04
新型コロナウィルスの世界的な流行により、工事を一時中断
地元行政の指導で約2か月にわたり工事を中断
新型コロナウィルスの陽性者が発生していないか毎日確認し、建設工事に関わるスタッフの体調管理を実施
2020.09
本工事着手
取水堰、取水口、導水路等の構造物の建設を順次開始
2022.02
トンガル水力発電所近郊で地震が発生
マグニチュード6.2の大規模な地震が発電所近郊(発電所から約12km)で発生し、工事が一時中断
現場関係者に負傷者は出ず、幸いにも発電所におけるクリティカルな構造物へのダメージはなし
2022.03
導入水車の試験を実施
導入水車を設計したGlobal Hydro社のオーストリア工場にて水車の検査を実施
2022.08
水車関連設備をオーストリアからインドネシアまで海上輸送を実施
ロシア・ウクライナ情勢の影響もありながら、海上輸送にて無事インドネシアに水車設備が到着
2023.08
建設工事完了
約3年半の工期を経て、トンガル発電所の建設工事が完了
約2か月試運転を実施し、問題なく試験も完了
2023.10
PT. PLNとの商業運転契約を締結
10⽉27⽇にPT. PLNと商業運転の契約を締結
2023.11
商業運転を開始
11月1日より商業運転を開始
FEATURES OF TONGAR HYDRO POWER PLANT
日本企業がマジョリティの立場で水力発電事業を開発
BIM/CIM技術の活用
JAPANコンストラクション国際賞 中堅・中小建設企業部門 国土交通大臣表彰受賞
アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の首脳会合に向けたMOU案件に、トンガル水力発電事業が掲載
インドネシア国営開発銀行 PT. Sarana Multi Infrastruktur Perseroより2024優良プロジェクトに選出
トンガル水力発電所 竣工式
日本企業がマジョリティの立場で水力発電事業を開発
トンガル水力発電事業は、各種権利取得やPLNとの売電契約締結など、2013年以降インドネシア企業が単独で開発を進めていました。しかし、技術面や資金面での問題から、プロジェクトが行き詰まっていた中、NiXグループのインドネシア現地法人NIC及びNiX JAPANによる技術最適化、プロジェクト資金支援を経て問題を解消し、日本企業がマジョリティの立場で自社水力発電所を開発した大変珍しいケースでもあります。
現地法人のNICがオーナーズエンジニアリングとして最適化検討を重ね、実現可能性と収益性を高めることで事業費削減及びリスク低減を図り、施工中も複数名の社員をオーナー側の立場として現地サイトに常駐させ、工事施工管理、品質の確保、工期管理を行いました。プロジェクトの技術的、管理的な観点でサポートを行うことで、本事業の成功を確実にする重要な役割を果たしました。
更には、土木施工を本業とするJVパートナーのPT. Nusa Konstruksi Enjiniringがオーナーズコンストラクションとして土木建設工事を実施することで、工期遅延、コスト管理、品質の劣化を抑制できるスキームとしました。
また、発電所の運営、維持管理については現地住民を多数雇用しており、今後も新規雇用の創出による地域経済の活性化にも寄与していきます。
BIM/CIM技術の活用
エンジニアリングには建設DXを積極的に取り入れ、設計・施工管理においてNICが作成した3D・4DモデルのBIM/CIM技術を活用しています。施工前に3Dモデルを作成し可視化することで、施工会社とイメージの共有を図ることができ、構造物の干渉チェックも容易になり、難工事箇所を確認することができました。またBIM360の数量自動計算を利用することで、ミスや手戻りの大幅な減少、単純作業の軽減にも有効活用できました。さらに、3Dモデルにプロジェクトの管理情報(時間、機材、人員等)を付加した4Dモデルも作成することによって、スケジュールに沿った施工手順をシュミレーションすることが可能になり、構造物の干渉、遅延、投入リソースなどに差異がないかを確認しました。
実現可能な工程か、安全を考慮した施工が可能であるかを具体的に可視化し、設計から施工管理まで一貫した情報を施工会社と共有することで、工事管理の効率化と工事品質の向上を可能にしました。
また、施工管理においては毎日の進捗報告に加え、週に1回ドローンで撮影した動画で工事進捗を確認することで、全体行程をリアルタイムに把握しました。BIM360を活用することで、遠隔地からも施工管理が可能になり、現場、ジャカルタオフィス、在宅勤務、日本本社の4拠点から施工管理を行い、時間や場所にとらわれない働き方も可能となりました。
※4Dモデルを動画でご紹介
トンガル水力発電所4Dモデル August 2022
JAPANコンストラクション国際賞 中堅・中小建設企業部門 国土交通大臣表彰受賞
トンガル水力発電事業の取り組みを評価いただき、第7回JAPANコンストラクション国際賞の中堅・中小建設企業部門において国土交通大臣表彰を受賞しました。
この表彰は、国土交通省が「質の高いインフラ」のさらなる普及啓発を図り、我が国企業の海外におけるプレゼンスを高めるとともに、我が国企業のさらなる海外進出を応援することを目的としたものです。また、海外において高い評価を得ている建設プロジェクトや海外で活躍する我が国企業等を日本国内にもわかりやすく伝えることによって、若年世代が将来建設産業に携わることへの興味・関心を高めることも期待されています。
【事業評価ポイント】
以下の点において国土交通省より評価をいただきました。
1. 現地開発銀行とのプロジェクトファイナンス契約や日系政府金融機関の支援による資金調達により、海外事業の統括拠点としてシンガポール持株会社を設立し、再生可能エネルギーの導入に向けたFIT制度がある東南アジア地域への事業展開を検討している。
2. 自社水力発電開発に合わせ、コミュニティ道路を舗装整備し、周辺住民と共同利用している。
3. 地震で道路や公共施設が被害を受けた際、事業の工事用重機や人員リソースを活用し、公共道路の補修を無償で引き受け、災害復旧を最優先に対応している。
アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の首脳会合に向けたMOU案件に、トンガル水力発電事業が掲載
日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の機会を捉え、2023年12月18日、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合が開催されました。日本から岸田内閣総理大臣(当時)、齋藤経済産業大臣(当時)等が出席したほか、AZECパートナー国の首脳が参加し、AZECの考え方や活動に係る議論を実施しました。
その中で、アジアの脱炭素化に向けた取り組みに関する事例案件に本事業が取り上げられました。ほとんどの事例案件は事業実現化前のMOUやLOI、協力協定、基本合意の段階であり、商社、電力・ガス会社、金融等の大手企業が占めている中、本事業は既に事業化まで進んでいる案件として評価されました。
インドネシア国営開発銀行 PT. Sarana Multi Infrastruktur Perseroより2024優良プロジェクトに選出
トンガル水力発電事業の事業主体である特別目的会社OTEは、インドネシア国営開発銀行SMIより優良なプロジェクトを実施したとして、約140のプロジェクトの中から8つの優良プロジェクトに選出されました。
SMIはインドネシア財務省の100%子会社である国営開発銀行として、インドネシア国内のインフラ整備開発案件を促進するための役割を担っている開発銀行で、SMIとOTEはトンガル水力発電事業においてプロジェクトファイナンス契約を締結し、ファイナンス支援を受け、事業を推進いたしました。
SMI は提供する全ての融資において環境・社会保護(Environmental and Social Safeguard:ESS)の原則を重視しており、環境・社会デューデリジェンス(Environmental and Social Due Diligence:ESDD)調査と、環境・ソーシャルマネジメントの実施に関する是正措置計画(Corrective Action Plan:CAP)の履行を監理し、債務者のコンプライアンスレベルとパフォーマンスレベルを評価しています。
今回、2023年7月~2024年7月の評価期間中、トンガル水力発電事業においてOTEはCAPを適切かつ完全に履行したとして評価され、環境、社会保護、返済履行良好な優良プロジェクトとして選出されました。
トンガル水力発電所 竣工式
2023年12月18日に現地トンガル水力発電所にて竣工式を執り行いました。
竣工式には日本からも現地視察を兼ねて政府機関、金融機関の方々が出席され、現地発電所竣工に協力いただいた地元行政の方々等、合計100名近くの出席者が参加しました。祝辞では、在インドネシア日本国大使館、西パサマン県知事、エネルギー鉱物資源省、インドネシア国営電力会社PT. PLNからご挨拶をいただきました。
竣工式では現地の舞踊が披露され、日本から持参したダルマの目入れを行う等、双方の文化を取り入れた賑やかな竣工式となりました。
日本企業がマジョリティの立場で水力発電事業を開発
トンガル水力発電事業は、各種権利取得やPLNとの売電契約締結など、2013年以降インドネシア企業が単独で開発を進めていました。しかし、技術面や資金面での問題から、プロジェクトが行き詰まっていた中、NiXグループのインドネシア現地法人NIC及びNiX JAPANによる技術最適化、プロジェクト資金支援を経て問題を解消し、日本企業がマジョリティの立場で自社水力発電所を開発した大変珍しいケースでもあります。
現地法人のNICがオーナーズエンジニアリングとして最適化検討を重ね、実現可能性と収益性を高めることで事業費削減及びリスク低減を図り、施工中も複数名の社員をオーナー側の立場として現地サイトに常駐させ、工事施工管理、品質の確保、工期管理を行いました。プロジェクトの技術的、管理的な観点でサポートを行うことで、本事業の成功を確実にする重要な役割を果たしました。
更には、土木施工を本業とするJVパートナーのPT. Nusa Konstruksi Enjiniringがオーナーズコンストラクションとして土木建設工事を実施することで、工期遅延、コスト管理、品質の劣化を抑制できるスキームとしました。
また、発電所の運営、維持管理については現地住民を多数雇用しており、今後も新規雇用の創出による地域経済の活性化にも寄与していきます。
BIM/CIM技術の活用
エンジニアリングには建設DXを積極的に取り入れ、設計・施工管理においてNICが作成した3D・4DモデルのBIM/CIM技術を活用しています。施工前に3Dモデルを作成し可視化することで、施工会社とイメージの共有を図ることができ、構造物の干渉チェックも容易になり、難工事箇所を確認することができました。またBIM360の数量自動計算を利用することで、ミスや手戻りの大幅な減少、単純作業の軽減にも有効活用できました。さらに、3Dモデルにプロジェクトの管理情報(時間、機材、人員等)を付加した4Dモデルも作成することによって、スケジュールに沿った施工手順をシュミレーションすることが可能になり、構造物の干渉、遅延、投入リソースなどに差異がないかを確認しました。
実現可能な工程か、安全を考慮した施工が可能であるかを具体的に可視化し、設計から施工管理まで一貫した情報を施工会社と共有することで、工事管理の効率化と工事品質の向上を可能にしました。
また、施工管理においては毎日の進捗報告に加え、週に1回ドローンで撮影した動画で工事進捗を確認することで、全体行程をリアルタイムに把握しました。BIM360を活用することで、遠隔地からも施工管理が可能になり、現場、ジャカルタオフィス、在宅勤務、日本本社の4拠点から施工管理を行い、時間や場所にとらわれない働き方も可能となりました。
※4Dモデルを動画でご紹介
トンガル水力発電所4Dモデル August 2022
JAPANコンストラクション国際賞 中堅・中小建設企業部門 国土交通大臣表彰受賞
トンガル水力発電事業の取り組みを評価いただき、第7回JAPANコンストラクション国際賞の中堅・中小建設企業部門において国土交通大臣表彰を受賞しました。
この表彰は、国土交通省が「質の高いインフラ」のさらなる普及啓発を図り、我が国企業の海外におけるプレゼンスを高めるとともに、我が国企業のさらなる海外進出を応援することを目的としたものです。また、海外において高い評価を得ている建設プロジェクトや海外で活躍する我が国企業等を日本国内にもわかりやすく伝えることによって、若年世代が将来建設産業に携わることへの興味・関心を高めることも期待されています。
【事業評価ポイント】
以下の点において国土交通省より評価をいただきました。
1. 現地開発銀行とのプロジェクトファイナンス契約や日系政府金融機関の支援による資金調達により、海外事業の統括拠点としてシンガポール持株会社を設立し、再生可能エネルギーの導入に向けたFIT制度がある東南アジア地域への事業展開を検討している。
2. 自社水力発電開発に合わせ、コミュニティ道路を舗装整備し、周辺住民と共同利用している。
3. 地震で道路や公共施設が被害を受けた際、事業の工事用重機や人員リソースを活用し、公共道路の補修を無償で引き受け、災害復旧を最優先に対応している。
アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の首脳会合に向けたMOU案件に、トンガル水力発電事業が掲載
日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の機会を捉え、2023年12月18日、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合が開催されました。日本から岸田内閣総理大臣、齋藤経済産業大臣等が出席したほか、AZECパートナー国の首脳が参加し、AZECの考え方や活動に係る議論を実施しました。
その中で、アジアの脱炭素化に向けた取り組みに関する事例案件に本事業が取り上げられました。ほとんどの事例案件は事業実現化前のMOUやLOI、協力協定、基本合意の段階であり、商社、電力・ガス会社、金融等の大手企業が占めている中、本事業は既に事業化まで進んでいる案件として評価されました。
インドネシア国営開発銀行 PT. Sarana Multi Infrastruktur Perseroより2024優良プロジェクトに選出
トンガル水力発電事業の事業主体である特別目的会社OTEは、インドネシア国営開発銀行SMIより優良なプロジェクトを実施したとして、約140のプロジェクトの中から8つの優良プロジェクトに選出されました。
SMI はインドネシア財務省の100%子会社である国営開発銀行として、インドネシア国内のインフラ整備開発案件を促進するための役割を担っている開発銀行で、SMIとOTEはトンガル水力発電事業においてプロジェクトファイナンス契約を締結し、ファイナンス支援を受け、事業を推進いたしました。
SMI は提供する全ての融資において環境・社会保護(Environmental and Social Safeguard:ESS)の原則を重視しており、環境・社会デューデリジェンス(Environmental and Social Due Diligence:ESDD)調査と、環境・ソーシャルマネジメントの実施に関する是正措置計画(Corrective Action Plan:CAP)の履行を監理し、債務者のコンプライアンスレベルとパフォーマンスレベルを評価しています。
今回、2023年7月~2024年7月の評価期間中、トンガル水力発電事業においてOTEはCAPを適切かつ完全に履行したとして評価され、環境、社会保護、返済履行良好な優良プロジェクトとして選出されました。
トンガル水力発電所 竣工式
2023年12月18日に現地トンガル水力発電所にて竣工式を執り行いました。
竣工式には日本からも現地視察を兼ねて政府機関、金融機関の方々が出席され、現地発電所竣工に協力いただいた地元行政の方々等、合計100名近くの出席者が参加しました。祝辞では、在インドネシア日本国大使館、西パサマン県知事、エネルギー鉱物資源省、インドネシア国営電力会社PT. PLNからご挨拶をいただきました。
竣工式では現地の舞踊が披露され、日本から持参したダルマの目入れを行う等、双方の文化を取り入れた賑やかな竣工式となりました。
ABOUT NIX INDONESIA CONSULTING
2019年4月、インドネシアで水力発電、太陽光発電等のエネルギー事業を主要事業として取り組むため、エンジニアリング会社PT. NiX Indonesia Consultingを設立しました。日系現地ゼネコンやグローバル大手のコンサルタント会社に所属していた水力発電の設計や土木施設の施工経験の豊富なインドネシア人エンジニアを複数名雇用し、FSから計画・設計・施工管理・運営管理といったIPPエンジニアリング事業を主力として体制を構築しています。
また、自社水力発電事業においてはオーナーズエンジニアリングとして、3D、4DなどのBIM/CIM技術を取り入れ、高品質なプロジェクト管理を実施できる体制を構築しています。
社名 | PT. NiX Indonesia Consulting |
---|---|
設立 | 2019年4月 |
事業内容 | インドネシアにおける水力・太陽光発電エンジニアリング |
社員数 | 11名(技術系社員 7名、管理系社員 4名) |
所在地 | インドネシア ジャカルタ |
Sustainability
NiXグループは気候変動や新興国の電力不足解消といった社会的課題の解決を目的に、エネルギー事業を強力に推進し、クリーンな電力を未来へと創出し、日本とインドネシア両国の脱炭素社会の実現、カーボンニュートラルにも貢献していきます。
現地の電力不足に貢献
気候変動問題に対応した再生可能エネルギー電力を現地の電力不足に活用し、現地住民が快適な生活を持続するために貢献します。
・地域電力需要への貢献
・エネルギーセキュリティの安定化に貢献
地域貢献
トンガル水力発電所が新たに完成したことで、現地住民を発電所スタッフとして雇用し、継続的に雇用されることで地元経済の成長にも貢献することを目指します。
・開発地域への税収の増加による経済活性化に寄与
・社会インフラ整備
・公共施設、公共道路の整備
・地元住民の雇用促進
脱炭素社会実現への貢献
再生可能エネルギーを活用することで日本及びインドネシア両国の温室効果ガス排出量の削減目標の達成に向け貢献します。
・再エネ電源の発電
・温室効果ガスの削減目標に寄与
・二国間クレジット制度の活用
二国間クレジット制度(JCM)とは、途上国への優れた低炭素技術・製品・システム・サービス・インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス(GHG)排出削減・吸収への日本国の貢献を定量的に評価し、日本国の削減目標の達成に活用するため、JCMを構築・実施しているものです。
JCMでは、日本法人がパートナー国の現地企業等と協力してプロジェクトを実施し、そこで削減・吸収されたCO2等のGHG排出削減量を「クレジット」として取得し、日本のGHG削減目標の達成に活用することができます。
JCM制度のスキームを活用し得られたクレジットは、カーボン・オフセットへの活用やクレジットを振替により移転し売買することが可能となっています。
現在、日本国は17の国と共に気候変動対策を目的としたJCMを実施しており、この制度はパリ協定の実施及びカーボンニュートラルの構築を促進するとともに、パートナー国の持続可能な開発にも貢献しています。
インドネシアで開発したトンガル水力発電事業が環境省の「令和2年度二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」(※1)において「西スマトラ州西パサマン県6MW小水力発電プロジェクト」として採択され、当社は代表事業者として事業を推進しました。
本プロジェクトで想定されるGHG削減量は、18,319t CO2/年を見込んでおり、カーボンニュートラルの実現に向け貢献いたします。
なお、本プロジェクトはインドネシア政府と日本政府の協力の下で実施されています。
本プロジェクトの実施によって算出されるGHG削減量をクレジットとして発行することにより、日本国とパートナー国であるインドネシアが掲げるGHG削減目標達成に活用されます。
(※1)設備補助事業:優れた脱炭素技術等を活用し、途上国等における温室効果ガス排出量を削減する事業を実施し、測定・報告・検証(MRV)を行う事業。途上国等における温室効果ガスの削減とともに、JCMを通じて我が国及びパートナー国の温室効果ガスの排出削減目標の達成に資することを目的とする。優れた脱炭素技術等に対する初期投資費用の2分の1を上限として補助を行う。
事業者としてはプロジェクトの収益性の改善のみならず、企業としてのSDGsやESG指針にも重大な意味をもたらします。当社としても脱炭素化や電力不足解消といった社会的課題の解決を目的に国内外の再生可能エネルギー事業を進めてきましたが、今後も国内外の事業拡大により一層の社会的責任を果たしていきます。
そして、インドネシアの再生可能エネルギーの増加を図り、同国の現実的なエネルギー・トランジションの実現に貢献していきます。