水工系グループでは、市民生活に直結する重要なインフラである上下水道施設の整備や維持管理、自然災害に対する防災事業など、下水道事業全般にわたる調査・計画・設計に携わっています。
中でも、近年増加している『大規模地震』や『ゲリラ豪雨による浸水被害』については、被害の軽減や未然防止のための事前対策が求められています。
そこで、弊社の経営ビジョンの1つである【防災・減災】の対応業務である『下水道施設の耐震化』、『下水道BCP策定』、『浸水対策計画』に重点的に取り組んでいます。
ハード対策としては、下水道施設の耐震化があります。
既存の処理場やポンプ場の耐震診断を行い、調査・診断結果に基づき、施工性、維持管理性等を考慮した耐震補強設計や、緊急確保路線に埋設されているマンホールが液状化により浮上しないように対策検討を行うなど、大規模地震発生時においても下水道基幹施設としての機能が維持できるよう(防災)インフラ設備を進めています。
ソフト対策としては、下水道BCPの策定があります。
東日本大震災では、施設被害だけでなく、施設を管理する行政職員の被災や津波による防災拠点・資機材の喪失によって、復旧活動に遅れが生じました。
そこで、下水道BCPの策定では、発災後優先的に行う業務や調査、必要な資機材、そして連絡調整方法等を整理することで、下水道サービスの継続と復旧時間の短縮を図り、市民生活への影響を最小限にとどめること(減災)が可能になります。
確かに、20年前に比べ、近年、浸水被害は増加しているように感じられます。
1960年代までの気象災害の最大原因は「台風」でしたが、近年は、地球規模での温暖化が進行し、予測困難な局地的集中豪雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」が頻発するようになりました。
また、このような強い雨の増加に加え、市街地の拡大により、従来、遊水地として機能していた土地への開発が進むなど、都市域における浸水被害が増加しています。市街地の進展は、流域の保水・浸透機能を低下させるだけでなく、雨水の流入・流下時間を短縮させ、その結果、雨水流出量が増大するなど、従来、浸水被害がなかった地域においても、被害が発生するようになりました。
このように、近年の浸水被害は、ゲリラ豪雨の頻発と都市化の発展が相まって発生しており、いわゆる「都市型水害」が増加しているといえます。
最近の降雨傾向として、時間50mmの降雨は20年前の約1.5倍、時間100mmの降雨は約2.1倍にも増加しています。
このような豪雨に対し、被害が最小化するよう取り組んでいくことが重要であり、少なくとも時間50mm(概ね5年に1回)の豪雨に対しては、ハード整備により浸水被害「0」を目指すべきですが、これからは計画降雨を超える豪雨にも対応可能な対策を考慮し、地域特性に応じた整備水準を柔軟に考えていく必要があります。
また、ソフト対策として、「内水ハザードマップ」の作成・住民への周知を行うことにより、市民の防災意識の向上を図ることも重要であると思っています。
近年の降雨レーダの技術革新が著しく、従前の「Cバンドレーダ」の観測メッシュ1kmに対し、近年、国土交通省にて整備された「Xバンドレーダ」は250mメッシュとなり、飛躍的に降雨観測精度が向上しました。
また、その後、「Xバンドレーダ」より観測範囲は狭いですが、観測メッシュが50mと非常に細かい新たなレーダ(小型Xバンドレーダ)が開発されています。
これは、「降雨予測精度の向上」を意味しており、今後はこのレーダを活用した「ゲリラ豪雨の予測」が期待され、事前減災へのリードタイムの確保が可能となるなど、被害の軽減に大きく寄与してくれるものと期待しています。
近年、激化する自然災害に対して、ハード対策だけでなく、「自動」「共助」「公助」の3つの車輪が連携したソフト施策の推進は、被害の最小化を図る上での重要施策であり、市民一人ひとりが災害への備えを考え、行動できる社会を形成していくために、下水道事業に携わる技術者として、あらゆる課題に向き合い、下水道事業に貢献していきたいと思っています。
建設コンサルタントに従事して12年。これまで、主に浸水対策や下水道施設の耐震対策等、水に関わる施設の防災関連業務に従事。 昭和53年 富山県旧東砺波郡利賀村出身 金沢工業大学土木工学科卒業