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橋梁耐震補強設計における「発注者立場での課題解決」

ENGINEER’S VOICE Vol.16

橋梁耐震補強設計における「発注者立場での課題解決」

橋梁耐震補強設計における
「発注者立場での課題解決」

埼玉県部局長表彰受賞(埼玉県業務評定90点を獲得)

関越自動車道及び一級河川葛川を跨ぐ「坂戸入西大橋」を対象に、高速道路交差部の上部構造の形状調査及び耐震補強設計に従事しました。

本業務では最新技術による高精度な形状調査を実施し品質向上に努めました。また、調査・補強対策を工夫したことにより、耐震補強工事に伴う社会的な影響を抑えることができました。さらに、自主的にBIM/CIM導入を行い、複雑な構造の可視化を図りました。その結果、発注者から高評価を得て、令和4年度の埼玉県業務評定最高点である90点を獲得でき、部局長表彰を受賞することができました。

発注者立場における課題解決

この業務の課題はどのようなものでしたか?

調査上の課題:
  1. ①形状調査は高速道路上での高所作業車による作業となるため、車線規制により大きな交通影響が生じる。
  2. ②高速道路上の規制計画は、管理者との事前協議が必要であり、承認を得るまでに相当の期間を要する。

これらが設計工程上大きな支障となり、発注者の悩みとなっていました。

設計上の課題:
  1. ①補強対象となる橋脚の一部は、関越自動車道に近接するため、RC巻き立て補強策では、交通影響が長期間生じること。
  2. ②断水不可の水道幹線管路(φ400)が橋脚に添架されており、橋脚補強に伴い大規模な水道管の切回し、復旧が生じること。

これらの制約条件を回避できる補強方法の提案が求められていました。

協議上の課題:
  1. ①外から見えない箱桁内部の補強形状や補強部材の搬入方法など、紙の資料だけでは理解しづらい。
  2. ②補強形状が煩雑な橋座付近にある既設配筋、添架物、交差物件と補強部材との位置関係の把握をしたい。

受発注者間の合意形成には資料作成や説明方法における工夫が必要でした。

課題に対して工夫した点を聞かせてください。

調査方法:

当初の高所作業車による調査の代わりに、高速道路の敷地内で作業しない『3次元測量』を提案しました。規制を伴わないため、事前協議はメール等の調整で了承を得ました。一方、施工業者と竣工当時の資料を調査し修正版の竣工図の存在が確認されたため、同資料を借用し、3次元測量結果の精度を検証することができました。

補強方法:

制約条件が厳しい橋脚の補強を無くすため、より施工自由度の高い橋脚に制震ダンパーを設置し、地震時慣性力の分散化を提案しました。その結果、大規模地震時における橋全体の揺れ方を変更させ「橋梁全体系を配慮した耐震補強」を実現できました。また上水道管の切り回し及び高速道路の交通規制を回避でき、社会的な影響を抑えることができました。

協議方法:

社内では当時過去に事例の無い『LOD400のBIM/CIMモデル』を作成し『3次元測量』成果に統合しました。箱桁内や橋座上の新旧部材の位置関係を施工前に視覚的に認識させ、バーチャル空間で設計思想の可視化を実現。スムーズな合意形成に寄与しました。

建設コンサルタントの在り方

この業務に携わっての感想、今後の取り組み姿勢を聞かせてください。

業務に対して自主的に新技術の導入、高度な解析の実施を図り、社会的な影響を抑える調査・補強方法の提案、理解しやすい説明に取り組みました。高品質な設計成果の完成とともに発注者の抱える課題を解決し、受発注者間の信頼関係が構築できました。その結果、部局長表彰を受賞し、当社の知名度向上に貢献できました。建設コンサルタントは設計会社というだけではなく、サービス業であることを再び実感できました。
また、橋梁設計におけるBIM/CIM技術の有効性が判明できました。今後3D技術の向上を継続し、さらなる社内展開を目指します。

雷 暁宇 らい ぎょうう

平成4年生まれ、中国河南省出身。平成22年に来日、法政大学卒。橋梁設計を従事して7年。これまでに国交省、NEXCO、地方自治体等の業務で橋梁の新設設計や耐震補強設計に携わった。近年で橋梁設計におけるBIM/CIMの活用に注力し、建設業におけるDX推進による効率アップを目指している。

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